税所さんとバングラデシュとの出会いは2008年夏。世界に飛び出して何かしたいという思いを抱いていた時、『グラミン銀行を知っていますか』という1冊の本と出会った。
「貧しい人々に、ただお金を与えるのではなく、ビジネスができる資金を貸して、尊厳を持って暮らしていけるようにする」というグラミン銀行の活動を紹介する内容である。
中学、高校、大学とチャリティーや社会起業に憧れ実践しながらも、疑問や挫折感の連続だった税所さんは、ここで初めて「本物」と出会った思いがした。著者である秋田大学の坪井ひろみ先生にアポイントをとり、その日の夜行バスに乗り込んだ。そして、わずか1カ月後には、大学の仲間2人と共にバングラデシュへと飛び立ったのである。
現地では、貧しい女性たちがグラミン銀行から貸し付けを受け、自分にできるビジネスをしっかり行っている様子を目に焼き付けた。そして帰国した税所さんは、グラミン銀行で自分なりの新たな挑戦を始めようと決意したのである。
大学を休学しバングラデシュに渡った税所さんは、グラミン銀行で100名の日本人学生を農村に派遣して人材育成をする「グローバル・チェンジメーカー・プログラム(GCMP)」という新たなチャレンジを始めた。2009年5月、その熱意と行動力が認められ、同行の研究ラボ「GCC」初の日本人コーディネーターに就任したのである。