CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2011年度受賞

税所 篤快さん

夢を諦めかけた生徒たちに進学のチャンスを!

夢を諦めかけた生徒たちに
進学のチャンスを!

最貧国バングラデシュで教育格差の打破に挑む!

「貧困層の子どもはダッカ大学に入れない」といわれるバングラデシュ。日本の東大にあたるダッカ大学のような難関大学の合格者は、そのほとんどが予備校に通っているが、一流講師の授業を受けるには、村人の年収ほどのお金が必要だからだ。加えて、圧倒的な教師不足も都会と農村での教育格差を広げ、農村では優秀な高校生でも進学を諦めざるを得ない現実がある。

日本の大学を休学し、バングラデシュのグラミン銀行の研究ラボ「GCC」※で日本人初のコーディネーターとなっていた税所さんは、そうした現実を前にある思いを抱いていた。「先生が足りないのなら、映像授業を取り入れたらどうだろう。そうすれば、一流の先生の授業を誰もがどこでも受けることができるようになる」

これが、後に「教育革命」とまで現地で報じられた教育支援活動『e-Educationプロジェクト』の始まりだった。税所さんは仲間たちと一緒に、農村の高校生の大学進学という目標を実現するため、ひたすら走り続けた。

※GCCグローバル・コミュニケーション・センター

「グラミン銀行」と出会いひと月後にはバングラデシュへ

税所さんとバングラデシュとの出会いは2008年夏。世界に飛び出して何かしたいという思いを抱いていた時、『グラミン銀行を知っていますか』という1冊の本と出会った。

「貧しい人々に、ただお金を与えるのではなく、ビジネスができる資金を貸して、尊厳を持って暮らしていけるようにする」というグラミン銀行の活動を紹介する内容である。

中学、高校、大学とチャリティーや社会起業に憧れ実践しながらも、疑問や挫折感の連続だった税所さんは、ここで初めて「本物」と出会った思いがした。著者である秋田大学の坪井ひろみ先生にアポイントをとり、その日の夜行バスに乗り込んだ。そして、わずか1カ月後には、大学の仲間2人と共にバングラデシュへと飛び立ったのである。

現地では、貧しい女性たちがグラミン銀行から貸し付けを受け、自分にできるビジネスをしっかり行っている様子を目に焼き付けた。そして帰国した税所さんは、グラミン銀行で自分なりの新たな挑戦を始めようと決意したのである。

大学を休学しバングラデシュに渡った税所さんは、グラミン銀行で100名の日本人学生を農村に派遣して人材育成をする「グローバル・チェンジメーカー・プログラム(GCMP)」という新たなチャレンジを始めた。2009年5月、その熱意と行動力が認められ、同行の研究ラボ「GCC」初の日本人コーディネーターに就任したのである。

海外で、仲間を増やすコミュニケーションの達人といわれる税所さん

圧倒的な教師不足に映像授業での教育支援を決意

研究ラボのプロジェクトで農村を訪れた税所さんは、圧倒的な教師不足という現実に直面した。教師の一人は税所さんに「この国では、4万人も先生が足りないのです」と告げた。

その夜、満天の星空の下で冷たい井戸水を浴びた後、税所さんはある思いに胸を高鳴らせていた。「先生が足りないのなら、自分が日本で受けた映像授業を取り入れたらどうだろう」。高校時代、教師もあきれるほど偏差値の低かった税所さんは、受験までのわずか1年間、一流の講師によるDVD授業を受講し、絶対無理と言われた第一志望に現役合格するという経験を持っていた。首都ダッカの有名予備校で行われている最高レベルの授業も、DVD化すれば農村の高校生でも受けることができる。

税所さんは直感的に、自分のプランがうまくいくのではないかと確信した。「手続きを踏んでいては受験に間に合わない」そう思った税所さんは、映像授業をグラミン銀行のプロジェクトとして承諾してもらうため、総裁のユヌス博士に直接プレゼンテーションすることにした。

UCC、UNIAIDなど、大手予備校の看板がならぶ首都ダッカの中心地、ファームゲート
有名予備校で行われている最高レベルの授業も、DVD化すれば農村の高校生でも受けることができる
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