特別対談

山根 基世さん & 角居 勝彦さん

  • 対談 前編
  • 対談 後編
  • 対談を終えて
画像:山根 基世さん
山根
ホースセラピーに出合ったことで、角居さんご自身のお仕事にも変化はあったのですか。
角居
調教師として馬への接し方がずいぶん変わりました。競走馬というのは、レースに向けて精神的に追い込んでいって勝たせる方法が一般的です。しかし、そんなふうに人からストレスを与えられると、人嫌いな馬になってしまう可能性があるのです。そうではなく、馬と人が本当にいい関係で約束事がよく守られるよう調教すれば、引退後もいい関係でいられるのです。しかも、そうした調教の仕方に変えても、レースでの成績は下がらないんです。
山根
そうなんですね。
そのためには角居さんは調教師として、どう取り組まれているのですか?
画像:角居 勝彦さん
角居
結局は、人づくりが調教師の仕事だと思っています。馬を預かるのは調教師の仕事ですが、実際に馬と長い時間接しているのはスタッフですから。馬とのいい関係の中で調教できるスタッフを育て、チーム全体で馬づくりをするのが大事なんです。
山根
調教師さんの仕事は、まず人を育てるのが重要なんですね。角居厩舎の強さの秘密を垣間見た気がします。

馬を救うことが自分のエネルギーに

山根
厩舎での人づくりでも、引退馬を支援するホースコミュニティの活動も、角居さんは近代的、合理的な仕組みを作ることから始めておられるのにも感銘を受けました。だからこそ、賛同者も増えるし、ネットワークも広がるのでしょう。
角居
ネットワークの広がりには、馬がいる限り僕もここにいる、という状況も大きいのかもしれません。「栗東の厩舎に行けば角居に会える」ということで、さまざまな取り組みをしている方が会いに来てくれます。それが人から人へのつながりとなって、乗馬クラブやNPO、大学、企業などと多様な連携が生まれています。
画像:馬との触れ合いは、心身のリハビリ効果に大きな期待を集めています
山根
ホースコミュニティの活動は、引退馬のセカンドキャリア支援が中心ですが、今後は馬を介したコミュニティづくりに取り組みたいとおっしゃっていますね。
角居
最終的には、高齢者から子どもたちまで、皆の身近に馬がいて誰もが楽しめるコミュニティを作りたいというのが目標です。
山根
今、北海道で新しい試みを進められているとお聞きしましたが、その一環ですか。
角居
浦河町という所で、障がい者乗馬の団体が精神科のお医者さんと共同で、障がい者乗馬用の馬を育成する計画を進めています。そこでは、乗馬用の馬のしつけも、障がいのある方自身が行うというものです。
画像:さまざまな活動で引退馬支援の輪を広げている「サンクスホースプロジェクト」
山根
それは皆さんの就労支援にもなりますし、角居さんの夢はまだまだ膨らみますね。
角居
今、JRAにも賛同をいただいて、馬主の方や騎手、調教師、そして馬の生産に携わる方も、皆がつながってこの活動に取り組もうとしています。競馬の世界は成績を上げれば次はさらに良い成績を期待されプレッシャーも多いのですが、この活動を通して馬と触れ合った皆さんの笑顔を見ると、また頑張ろうというエネルギーをもらえるんです。
山根
馬を救うことが、角居さんご自身を救うことにもなっているんですね。本日はありがとうございました。

(敬称略)

画像:対談風景
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