CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

山本 宏昭やまもと ひろあきさん

東京都在住

コロナ禍で地元の通勤客の感染不安をなくそうと、半年にわたって無料の通勤バスを都心まで運行

東京都東村山市でバス会社「銀河鉄道株式会社」を経営する山本宏昭さん(57歳)は、新型コロナウイルス感染が拡大し始めた2020年3月12日から9月11日までの半年間、観光バスを提供して通勤客向けのバスを無料で運行した。コロナの影響で需要が激減し、自社の経営も厳しい中、東村山駅前から新宿西口を経由して東京駅新丸ビル前まで平日は毎朝運行を続けた。

山本さんが無料通勤バスを始めたのは、コロナ禍の通勤電車において車内での軽い咳払いから乗客同士がケンカになったというニュースに心を痛めたためだ。「社会のために通勤を余儀なくされている方が、少しでも感染の不安なく通勤してもらいたい」と立ち上がった。

国土交通省に掛け合い運行できることが決まると、山本さんは早速行動に移す。乗車前の手指消毒や車内の換気を徹底し、座席は2席分に1人が座るなど、「密」を避けるように工夫して乗客を運んだ。乗客からは差し入れがあったり、温かい言葉が掛けられた。驚いたのは、無料通勤バスが反響を呼びメディアで取り上げられるようになると、それをニュースで知った全国の人から激励や寄付が相次いだことだ。山本さんの行動は、ひとつの地域に留まらず、全国に感動を与えた。

2020年9月11日、山本さんは無料通勤バスの最終便を運行。当時、電車通勤での感染事例がほとんど無く、利用者も落ち着き、観光バスの需要も回復し始めた為、一定の役割を果たせたと判断した。半年間で140本以上を運行し、延べ2,400人を東村山から東京都心まで送り届けた。

幼少の頃、実家の前にバス停があり、山本さんは毎日間近で見るバスを大好きになった。21歳で大型二種免許を取得、大学時代はアルバイトでバスの洗車係、車掌、陸送係などを経験。大学卒業後、バスの運転手を目指すも当時は大卒採用を行っておらず断念。しかし、どうしても夢を捨てきれず実家の酒屋を手伝いながら念願の中古バスを購入すると、寝食を忘れバスの手入れに明け暮れた。そして採用されないなら自分でバス会社をはじめようと「銀河鉄道株式会社」を設立。社名は設立年が1999年だったことから、人気アニメ「銀河鉄道999」にあやかった。以来、「大好きなバスで地域貢献したい」との思いで、大手バス会社が手をつけない地域の路線バスを、行政からの補助金を受けずに運営している。

父親(故人)からの「常に地域のために何ができるかを考え、行動する」という教えが、いまも山本さんのなかに生きていて、地域貢献をする原動力となっている。

東日本大震災のときは、若い学生たちに被災地での活動を経験してほしいとの思いで、他社が運行を拒む中、被災地へ約2,000人の学生ボランティアを無料で運んだ。

山本さんは今後、現在路線のない東村山と羽田をシャトルバスで結びたいと語る。インフラが整備されれば、若い人が東村山に集まり、地域が進化すると考えている。山本さんの夢は果てしない。

  • 延べ2,400人が利用した
  • 山本社長の活動に感銘し全国からも支援が相次いだ
  • 「大好きなバスで地域貢献したい」と語る山本社長

表彰理由

「バスが好きで好きでたまらない」。少年の夢を失わない山本さんに爽やかな感動を覚える。赤字を承知で「地域の足」としての役割を果たす路線バスを運行、赤字は観光バス収入で補填しているという。コロナ禍の元、その収入も激減したはず。それでも、東京への無料通勤バスを半年間も走らせた山本さんの侠気(おとこぎ)に拍手を送りたい。バスへの愛情は、地域の人々への深い思いやりと重なる。コロナ禍で沈む世相の中、一条の光明を見る思いがする。

受賞コメント

私の会社では路線バスを運行しています。路線バスは「人々の暮らしを守る」という重要な役割を担い、公共性が高い反面、利益が出る事業ではありません。その赤字を、国や自治体から補助金(税金)を受けるのではなく、観光バスを動かすことで補ってきました。亡父・藤夫は赤穂浪士で有名な播州赤穂の出身です。彼らが己を捨てて大義のために尽くしたように、コロナ禍における無料通勤バスも「日本人として当然のこと」と思っていました。名誉ある賞をいただき、とてもうれしく思います。

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