濱田さんがラーメンのボランティアを始めたきっかけは1989年。熊本県益城町でラーメン店「福ちゃんラーメン」を営んでいた濱田さんは、ある日、近所にできた障がい者施設から出前の注文を受けた。施設に着いた濱田さんが「こんにちは、福ちゃんラーメンです」と声を掛けると、ひとりの少年が大声をあげながら突進してきた。この出会いが、その後の濱田さんの人生を決定づけることになったのである。
大声をあげながら突進してくる少年を目の当たりにし、ラーメンを守ろうと後ずさりした濱田さんだったが、近づいた少年は岡持ちに手を伸ばすと、うれしそうに施設内に運んでくれたのである。
施設の人から、「お手伝いしたい」という気持ちからの行動だったと聞かされた濱田さんは、「人は誰でも人のためにできることがあるんだ」と、その少年から教えられたような強い衝撃を受け、自らの偏見を恥じたと話す。
その日から、出前のたびに施設の利用者と触れ合うのが楽しみとなった濱田さんだったが、施設の食堂が完成すると注文はぱったり途絶えてしまった。日増しに寂しさが募った濱田さんが施設に連絡をすると、施設長から「利用者に外食をさせようとあちこちのお店に電話をしても、障がい者施設であることを理由にいつも断られてしまうのです」という話を聞いた。そこで濱田さんは、施設の人たちを自分の店に招待することを思いついた。