CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2005年度受賞

吉野健治郎・勝 親子

半世紀にわたり、お年寄りに贈り続けた眼鏡3000個

半世紀にわたり、お年寄りに
贈り続けた眼鏡3000個

取材・文:清丸恵三郎

「希望する方には全員」をつらぬく

毎年、9月半ばの敬老の日になると、大阪府南部泉佐野市の市役所会議室に次々と老人たちがやってくる。

この日、希望する人に老眼鏡がプレゼントされるのである。といっても市が贈っているわけではない。泉佐野市に本社を置くヨシノ眼鏡店がプレゼント主で、すでに09年まで49年間にわたって、市内の生活保護を受けている65歳以上の老人に贈呈されている。ボランティア活動などという言葉を誰も耳にしたことがなかった半世紀ほども前からの、息の長い活動なのである。

会場には、ヨシノ眼鏡店会長の吉野健治郎さん、息子で社長の勝さん、それに数人の社員が詰めており、70~80人ほどの老人たち一人ひとりを視力測定したうえ、フレームについて希望の色などを聞き、渡していく。ありあわせのものを適当にというのではではなく、普通の来店客への対応と基本的に同じである。1本8000円から1万円ほどのものだという。「せっかく無料で差し上げるんですから、悪いものでは逆に店の信用にかかわります」

1930年生まれの健治郎さんは温顔を引き締めて、そうきっぱり言い切る。

今も変わらぬ、地域に対する祖父からの熱い思い

ヨシノ眼鏡店がこの活動を始めたのは、健治郎さんの父親で、創業者でもある恒一さんが、「店も軌道に乗り、年1回家族旅行にも行けるようになった。何か佐野の町にお礼をしたいと言い出した。それで私が、それなら目の不自由な方にメガネを上げたらどうかと言うと、そうしようかということで始まったんです」

実はこれは1955年頃のことで、初期の数年は内容も不満足だったため、49年の奉仕活動にカウントされていない。まだ泉佐野は市ではなく町だった。

恒一さんは83年に亡くなるが、晩年になっても敬老の日が来ると「俺の出番だ」と言って、視力測定をするためにいそいそと市役所へ出かけたものだという。

活動を始めた、創業者の恒一さん
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