CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2022年度受賞

認定NPO法人 マギーズ東京

自らの経験をもとに設立に尽力した鈴木美穂さん

運命的な出会いがマギーズ東京設立を加速!

2014年4月、秋山さんの「暮らしの保健室」をテレビ局の取材として訪ねた鈴木さんは、現在の活動内容を聞くとともに自分自身の経験や想いを語り、マギーズセンターに共感していることを伝えた。そこに訪問の真意を感じ取った秋山さんも、日本でのマギーズセンター開設への熱意を語った。

こうして、互いの想いが一つであることを知った二人はすぐに意気投合。秋山さんには医療にかかわる仲間がおり、鈴木さんにはがん経験者の視点を持つ仲間がいることから、「自分たちが一緒になればきっと実現できる」と、その日のうちに協力し合うことを決めたのである。

設立に向けて実際に走り出すと、それぞれの人のつながりで状況は急速に進展。鈴木さんの友人関係の情報から豊洲に土地が見つかり、クラウドファンディングにより資金面でも目処が立った。秋山さんのもとにも建築の専門家や、看護師、心理士など医療系のスペシャリストが集結。英国マギーズセンターとの協議も重ね、2016年10月、ついに念願の「マギーズ東京」がオープンしたのである。

(上)2016年10月にオープンの日を迎えたマギーズ東京
(左)看護師・心理士:管理栄養士・事務局など全員で運営を支える
(右)東京都から認定特定非営利活動法人に認定される

不安や孤独から自分の力を取り戻すために

開設当初は、必要としている人に情報が届くのか不安も大きかったというマギーズ東京。しかし、近隣の病院に置いたパンフレットや、口コミ、SNSなどに加え、メディアにも取り上げられたことで認知度が向上。利用者は年々増加し、7年目の現在まで3万7,000人を超えている。

その背景には、がんの治療が入院から通院に変わる中で、患者や家族の暮らしは病院と自宅の往復が中心になり、不安や孤独を抱えながら難しい治療の選択や決断をしなければならない現実がある。だからこそ、それだけ多くの人にマギーズ東京が求められているのだ。

病院とは異なるマギーズならではのサポートについて秋山さんは、「時間を区切らず、まず話をよく聞くことから始まります。そうした中で、来訪された方はこれまで自分が歩いてきた道や困難を乗り越えた経験を思い出し、さらに現在の置かれた状況を理解することで気持ちが整理され、今後の治療や暮らしについて前向きになっていきます」と話す。そして、「私たちがしているのは、そんな心の拠りどころとなる『居場所』をご用意し、皆さんに自分の力を取り戻していただくためのお手伝いなのです」と想いを込める。

また、マギーズのサポートは、「支えること」と「支えられること」の循環だと鈴木さんは話す。自分の力を取り戻せるよう支えられた人が、次はがんになった知人などを支える側になったり、マギーズ東京自身もそうした人たちの存在に支えられているからだ。

(左)看護師や心理士などがじっくり話を聞き、きめ細かにサポート
(右)がん経験のある友人と来訪したり、マギーズで出会ったご利用者同士につながりが生まれることも

がんと共に歩む人々のためドアを開け続ける

(上)仕事終わりにも立ち寄れるナイトマギーズは月に2回実施されている
(下)参加・体験型のグループプログラムも行われている

無料で利用ができること、寄付により運営されていることに加え、「建築と環境」も大切なコンセプトで、マギーズ東京では四季の花や緑が来訪者の心を癒せるよう、地域の人と共にガーデンを育てている。室内も大きな木のテーブルや座り心地のよい椅子などが心安らぐ空間をつくり、サポートの一部となっている。

それを物語るエピソードも少なくない。がんの告知に打ちひしがれていたある年配の女性は、テーブルに使われている見事な一枚板に気づくと、自分が木場の材木商のおかみとして頑張っていた頃の話を語り始め、次第に表情にも生気が戻り、今まで踏み切れずにいた手術を自分で決断したという。

マギーズ東京では、こうして年間約6,000人もの来訪者を、看護師や心理士などの「キャンサーサポートスペシャリスト(CSS)」や、協力看護師、管理栄養士、運営事務局スタッフが親身に支えている。また、対面での支援のほか、コロナ禍では電話やオンライン、メールによる相談にも対応し(注:現在は対面での相談)、仕事終わりにも立ち寄れるナイトマギーズも月に2回実施。さらに、リラクセーションやストレスマネジメントなどのグループプログラムも用意され、そこでは参加者同士のつながりも生まれている。

今後に向けては、「がんと共に歩む人々を支える仕事に喜びを感じ、今回の受賞を継続の力として、これからもドアを開け続けていきたい」と話す皆さん。多くの支援者によるチャリティーに運営を支えられながら、全国にネットワークを広げ、活動はさらに続いていく。

英国の本部と定期的にオンラインミーティングも行う
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