CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2021年度受賞

平井 大輝さん

誰もが自分の未来を思い描き道を切り開いてほしい

誰もが自分の未来を
思い描き
道を切り開いてほしい

実家の廃業や両親の離婚で中学から貧困を経験

「うちにはお金がないから、あきらめよう」

もしそれが、自分の未来に対してつぶやいた高校生の言葉だとしたら。

大阪市のNPO法人「CLACK(クラック)」の理事長、平井大輝さんが、貧困家庭の高校生を対象に学習支援活動に取り組むようになった原点には、「そんな言葉を彼らに言わせたくない」という強い想いがあった。

平井さんに人生の転機が訪れたのは中学2年生のとき。実家のうどん店が廃業し、さらに両親が離婚。多額の借金がある父親と暮らすことになり、経済的に非常に厳しい状況となったのだ。それでもなんとか公立高校に進学したが、たびたび家の電気やガスが止まり、学校では交通費がなく部活の試合に行けなかったり、絵の具が買えず友だちから借りたりすることもあった。このため生活費や学費を稼ぐアルバイトの日々が続き、同級生との経済格差を痛感したのである。

幼い頃の平井さん(前列左)中学2年生の時、父親が経営するうどん店の廃業で経済的に厳しい状況になり、生活が一変する

大学で学習支援活動と出会いのめり込む

大学入学直後に、NPO法人「あっとすくーる」で高校生の支援に参加(写真中央が平井さん)

そうした中、将来は社会に貢献したいという気持ちを持ち始めた平井さんは勉強に打ち込み、2015年、給付型の奨学金を得て大阪府立大学(現 大阪公立大学)に進学。入学直後から、自分と同じような境遇で苦労している子どもたちのため何かできることをしたいと考え、経済的に苦しい中高生の学習支援を行うNPO法人「あっとすくーる」に参加。そこでは、先輩の学生らが熱意を持って学習支援に取り組んでいた。常にどうすれば相手の人生を少しでも良くできるのかを考えて活動している姿にあこがれた平井さんは、活動にのめり込むようになった。

もちろん、それだけではない。学生時代にしかできないことにも挑戦しようと、「夏休みや春休みを利用して国内だけでなくタイやベトナムといった東南アジアをバックパッカーやヒッチハイクで回り、多様な人々の生き方を知って価値観を広げることができました。現在ともに活動する仲間の一人と出会ったのもこのときです」と話す。

入学時から参加したNPOの活動は3年生まで続け、「それぞれに困難を抱える中高生の学習をサポートするとともに、一人一人の子どもにどう対応するかしっかり考えて行動することを学びました」と振り返る。

さらに、大学内に子どもの貧困問題が専門の山野則子教授の講義があることを知り学科を越えて受講。教育がいかに重要かを学び、「教授のシンポジウムにも参加して知見を広げることができ、その後の活動に大きくつながっています」と話す。

子どもの貧困に事業として取り組む覚悟を決め、シアトルでのリーダーシップ研修に参加(前列左から3番目が平井さん)

貧困の連鎖を止めようと在学中にCLACK設立

3年生が修了すると1年間休学し、社会や地域が抱える問題の解決を目指すNPO法人Co.To.hana(コトハナ)にインターンとして参加。ここでの活動を通し、貧困家庭の子どもたちへの支援を具体的な形にすることを決意した。「経済的に厳しい環境にある高校生の自立や自走につながる支援は、当事者として苦労し、その問題解決に向けた知識や経験を深めてきた自分がやらなければ、誰もやらないのではないか。そんな使命感のようなものに突き動かされました」という平井さん。こうして2018年6月、志を同じくする仲間とともに「CLACK」を設立。2019年3月にはNPO法人化した。

CLACKの根幹にあるのは「お金だけを援助しても貧困の連鎖からは抜け出せない」という考え。貧困家庭の高校生が、将来自分の力で生きていく力を身につけてもらうことを主眼とした。このため、無料の「プログラミング教育」と「キャリア教育」により、急速にデジタル化が進む中でますます求められるIT人材を育成することを活動の柱とした。その背景には、「プログラミングはトライ&エラーの繰り返しであり、試行錯誤しながら一つずつ課題を解決することで、考える力や困難を乗り越える力が養われ、『自走』する力につながる」という平井さんの想いもあった。

2018年6月志を同じくする仲間と「CLACK」を立ち上げる
Page Top
Page Top