経済的に厳しい状況にある母親のみのひとり親家庭の子どもたちの中には、親が仕事で甘えたい時期に甘えることができなかったり、学習機会が不足したりするなど、さらに複雑な困難を抱えている子どもたちがいる。その辛さは表面から見えにくく、誰にも相談できずにいる。そんな子どもたちやひとり親家庭に寄り添い支援している兵庫県西宮市のNPO法人「こどもサポートステーション・たねとしずく」(以下、たねとしずく)は、代表理事の大和陽子さんが中心となり、2022年7月に設立した団体だ。
活動のきっかけは2015年、大和さんが女性の自立を目指す団体「a little」を設立したことだ。有料で産前産後の家事支援を行う中で、母親たちの状況を把握すると同時に、孤立し困難から抜け出せない「ひとり親家庭」の存在を知る。生まれた環境に左右され、心に傷を負いながらも健気に生きる子どもたちの姿を目の当たりにして、有料では本来支援を必要とするひとり親に届いていないという問題意識を持ち始め、助成金で困窮世帯に届く無料の訪問支援を開始。
そこで、「a little」の訪問支援チームと独立し「たねとしずく」を設立。成長する「たね(人)」に「しずく」のような存在でありたいと命名した。現在、スタッフ10名、大人ボランティア10名、学生ボランティア14名が、①ひとり親、困窮世帯対象の訪問支援、②10代の若者を中心とした子どもの居場所支援、③地域支援をする人を増やし連携するための支援者支援、を中心に活動している。
訪問支援では問題解決を目指し、毎月1回2時間、スタッフ2名で家事や子育てを一緒にする伴走支援を行う。1名が親と家事をしている間、もう1名が子どもの世話をし、ここで親や子どもの本音を聞く。訪問支援はこれまで西宮市内の50世帯を対象に行ってきた。現在は17世帯を支援する。年間10~12回の訪問を行い、それでも解決が見えない場合は行政につなぐ。他に月1回食料支援のパントリーも行っている。ここではスタッフが生活の変化を確認したり、ひとり親同士が交流できたり、問題解決の一助になっている。
子どもの居場所支援では、2023年8月、子どもたちが自分のやりたいことを見つけ、行動できるようになる場所を目指し「たねとしずくライブラリー」を開設。安心して遊びや学習、読書ができる空間を提供し、学生ボランティアが子どもたちの年齢や状況に応じて遊び相手や、学習補助を行い、共に時間を過ごす。ここで子どもたちは家庭で話せないことを自然に話し始め、心を開くようになる。昼間は不登校の子どもや幼児の居場所としても機能し、様々な環境の子どもたちが集まる場となっている。また、支援者が寄付しお薦めの本を貸し出す「一箱本棚」や、中高生を対象にした学習スペース、夕食の提供もあり好評だ。同ライブラリーは月平均約130人が利用している。
大和さんは「ひとり親家庭を知れば知るほど大変な状況だ。自分たちの団体だけではどうにもならない」との課題を感じ、支援者や団体を増やす活動にも動き出した。以前関わった子どもたちが「自分の状況や気持ちを言え、自分の望みを誰かに伝えられるようになったときに活動を続けてきてよかった」と言う。「子どもたちが生まれ育った環境に左右されず、自分の人生を選べる社会を作っていきたい」と力を込める。
受賞コメント
しんどい状況にあるひとり親家庭の親子の支援を始めましたが、その中でひとり親家庭だけでなく多くのこどもたちが不安や孤独を抱えて懸命に生きていることを知りました。こどもたちの「こどもらしさ」を取り戻したい、親子の生活安定の力になりたいとの思いで続けてきた小さな歩みに対して賞をいただき光栄です。支えてくださった市民(=シチズン)の皆さまと共に、これからも力を合わせて活動を続けていきます。