CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2023年受賞

目が不自由でもできる「ブラインジェンヌメイク」を考案し、当事者目線で広める

メークを楽しむきっかけを広め
自信や笑顔に繋げていく

フラワーメイクアカデミー 「ブラインジェンヌ」チームは、目が不自由な人でも自分でメークができる化粧法「ブラインジェンヌメイク」を対面やオンラインで広めている。

「ブラインジェンヌメイク」は視覚障がいのある北條(ほうじょう)みすづさんが、フラワーメイクアカデミーの代表、化粧療法士・江口美和子(えぐち みわこ)さんの監修を受けて考案したものである。「パリジェンヌのように自分を磨く」という思いと、視覚障がいを意味する「ブラインド」を掛け合わせ命名した。視覚障がい者が、当事者目線で、別の視覚障がい者に教え、視覚情報を提供するサポート役がいる点もほかにない大きな特長だ。

小児がんで左目を摘出し、右目はものや色がぼんやりわかる状態の北條さんが本格的にメークを始めたのは、就職活動に入った18歳のとき。ファンデーションを塗り過ぎるなど失敗も続いたが、おしゃれが好きなこともあり、目が見える友人に見てもらい練習を重ねた。自分でメークができるようになると、視覚障がいの友人から「メークを教えて」と言われるようになる。ここまで自己流でやってきた北條さんは、教えるのなら正しく知識を身に着けたいと思うようになり、2019年に全盲の友人の紹介で江口さんが主宰するフラワーメイクアカデミーの講座に参加した。コロナ禍に見舞われ受講は中断するが、メークを教えることにやりがいを見出した北條さんは再び江口さんに連絡し思いを伝えた。このとき江口さんも「徹底的に関わるしかない」と一緒に視覚障がい者のためのメーク法を作っていく決意をした。

2021年10月から北條さんは江口さんの講座を再度受講し、メークを教えるのに必要な知識を身に着けた。同時に、北條さんと江口さんの「フラワーメイク・ブラインジェンヌ」メーク術として試行錯誤を繰り返しながらスタート。コロナが落ち着き始めた2023年1月から12月まで北九州市と福岡市で、視覚障がいの女性を対象に月1回1時間半のペースで対面による講座を行った。

講座は主に、洗顔や顔のマッサージ法などを実践するスキンケア編、化粧の基礎となる知識や仕方を教えるメーク編で構成。指や手を使い自愛の気持ちで自分の「肌に触れる」ことが重要だという。

講座の説明では、顔に複数ある「つぼ」の名称を使う。視覚障がい者は、はり・きゅうの知識を持つ人が多く、顔の部位で説明するよりも的確に伝わると同時に「つぼ」による美容と健康への効果も狙う。また、高価な化粧品や道具を使わず、手近な場所で購入できるものを使う。敷居を低くし、まずはメークを楽しんでもらうことが大切だと考えている。

実際に受講した人は、「自分に自信が持てた」「家族にもすごく褒められた」と語る。メークができたことで、自信や幸福感を感じるきっかけとなり、「前に進む力」「自己表現」につながっていく。

その他の活動では、地元の「国立福岡視力障害センター」に通う訓練生にも講座を行ったほか、動画投稿サイトYouTubeを活用して「ブラインジェンヌメイク」を紹介している。

視覚障がい者でも健常者と変わりなくメークができる人を増やしたい。北條さんと同じように教えられる視覚障がい者を全国に広げたいという思いを抱き、「フラワーメイクアカデミー」として法人化を進め、ブラインジェンヌチームとして始動している。北條さんは、「自分でメークした視覚障がい者が出演し、目が見えない人でも理解し楽しめるファッションショーをいつか開催したい」と夢を広げる。

表彰理由

視覚障がい者が、当事者の目線で教える視覚障がい者向けメークは他にはないもので、またそれを実践的なメーク法として作り上げた関係者の努力を大いに評価したい。「見えなくても、メークをするだけでモチベーションが上がり、自分らしくいられる」という北條さんの言葉が印象的である。メークが自信につながり一歩踏み出す勇気をもたらすという、視覚障がい者にとってのメークの意味を掘り下げ、社会に広めている意義は大きい。

受賞コメント

活動を始めて1年。まさかの朗報にドッキリではないかと疑ってしまうほど驚くとともに、嬉しさで胸がいっぱいになりました。この受賞を励みにチーム一丸となり、視覚に障害のある方々でもメークやファッションを楽しんで自信に繋げられる活動を継続し、自分らしさの魅力と咲顔(えがお)あふれる輪を広げていきます。

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