CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2024年受賞

一般社団法人日本認知症本人ワーキンググループ(JDWG)

JDWGでは本人と共に活動するパートナーの存在も大きい

認知症本人とパートナーの絆で地域に貢献

「日本認知症本人ワーキンググループ(JDWG)」は、認知症本人が主体の組織ですが、目的に賛同して共に活動するパートナーや理解者が一体となって取り組んでいることにも大きな意義があります。

金谷佳寿子さんは、鳥取で藤田和子さんや他の認知症本人のパートナーとして活動しています。以前はケアマネージャーをしており、認知症地域支援推進員になったことから藤田さんと出会い、JDWGの皆さんが生き生きと活動されている姿に惹かれ入会。「認知症本人の皆さんとパートナーの皆さんが、同じ目標に向かって頑張っている姿がとても素敵で、私も全国の皆さんとつながりたいと思い活動しています」と話します。

大分の吉川浩之さんは、戸上守さんや他の認知症本人のパートナーであると同時に、若年性認知症本人が多く集うデイサービスの代表を務めており、定期的に本人ミーティングを開催しています。また、戸上さんと共に県内を一緒に回ってピアサポート活動を行い、常により良い活動を二人で模索し相談していると言います。長崎で福田人志さんのパートナーとして活動している中倉美智子さんは、JDWG入会前から二人で「認知症サポート壱行の会」や当事者主体のカフェ「峠の茶屋」を立ち上げ共に活動。入会後も仲間を増やし、当事者や家族が住みやすい地域づくりに取り組んでいます。

(左)活動を通して全国の皆さんとつながりたいと話す、藤田さんのパートナー金谷佳寿子さん
(中央)戸上さんとピアサポートを行い、常に活動を良くする相談をしているという吉川浩之さん
(右)JDWG入会前から福田さんと認知症の方のサポート活動に尽力している中倉美智子さん

全員の体験や想いを重ね合わせた「希望宣言」

こうして、認知症本人が主体となりパートナーと共に偏見や誤解のない社会の実現を目指しているJDWGの大きな功績のひとつが、2018年に発表した「認知症とともに生きる希望宣言」です。

2017年に、認知症になってもより良い毎日を元気に暮らせるよう「本人ガイド」を作成したのに続き、2018年に発表したこの「希望宣言」は、認知症本人一人ひとりが希望をもって生きるための自発的な意思を示したもので、全国各地の本人会員が体験や想いを言葉にして寄せ合い、それを重ね合わせてつくり上げたものです。その背景には、将来的に認知症に関わる法律が制定されることを見据え、認知症本人がその人らしく生きることを実現できる法律につなげたいという想いがありました。

藤田さんは皆で「希望宣言」をつくり上げたときのことを振り返り、「認知症本人が主体であるワーキンググループだからこそ、希望をもって生きることを決して諦めない宣言にするため、言葉の一つひとつまで話し合いを重ねました。しかも、自分たちのためだけなく、これから認知症になる人たちのためにも永遠に恥ずかしくない、『人権宣言』と言っていただけるくらいのものにしなければならないという、皆の強い意思がありました」と話します。

全国の認知症本人会員が体験や想いを寄せ合ってつくり上げた「認知症とともに生きる希望宣言」。2024年施行の「認知症基本法」にその意思が反映された

さざ波がうねりとなるよう「希望のリレー」を全国に

「認知症基本法」は2023年に成立し翌24年に施行。同じ24年にはJDWGの10周年記念式典も行われた

「希望宣言」の発表から5年。2023年6月に成立し翌年1月1日に施行された「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」には、JDWGの皆さんの意思がしっかりと反映されました。従来のような認知症の「予防」や「対策」に重点を置くのではなく、「共生」の視点に重きを置くことを基本理念とする法律となったのです。

また、当事者自らが声を上げ、前向きに生きる姿を示し続けてきたことで、認知症に対する社会や人々の偏見や誤解も、徐々に変わり始めていると皆さんは話します。そうしたなかには、自らの認知症を公表したときに理解を得られなかった相手との「出会い直し」もあり、いまは一緒に地域の活動に参加するようになった相手から、「認知症になってもあなたが何も変わっていないことに気づき、私自身が認知症に偏見を持っていた自分と向き合う機会になりました」という声を聞くこともあるそうです。

昨年、設立から10年を迎えたJDWGは東京で記念式典を開催し、オンラインを含めて40人以上の認知症本人と家族やパートナーら410人が集まり、会場は笑顔に包まれました。「ひと足先に認知症になった私たちだからこそ、次に続く人たちのためにできることがある」というJDWGの皆さんが、認知症本人や周りの人たちに大きな力を与えている「希望のリレー」を広げる活動は、これからも続いていきます。

認知症本人とパートナーが集まる場所にはいつも笑顔があふれている
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