CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2013年度受賞

TOY工房どんぐり

どんな遊び方をしても壊れにくい、安全な布おもちゃ

言葉を発するのが苦手な子どもたちが、一生懸命歌いながら

こうして作られた布おもちゃは、障害のある子どもたちの伸びる力をさまざまに引き出した。

「『働くクルマ』の歌に合わせて布製おもちゃを作ったときは、普段言葉を発するのが苦手な子どもたちが、その歌を一生懸命歌いながら自分の好きなクルマの布おもちゃを手に取っていくのです。また、重い障害があるけれど、電車が大好きという子どもがいて、寝るときに私たちが作った電車の布おもちゃをしっかり握りしめているそうなんです。そうした話を聞くと、本当に作ってよかったと思いますね」と、デザイン担当の穂苅さんは笑顔を見せる。

TOY工房どんぐりがこれまで作った布製のおもちゃは、200種類以上にもなる。投げたり噛んだり、子どもたちのどんな遊び方にも壊れないおもちゃにするため、これまで培ってきたノウハウは既製品には決してないものだ。そして、それらの一つひとつに活かされたアイデアは、子どもたちの生活や成長を支えている現場の先生や、保護者からの意見や要望に応えながら作られたものである。

デザイン、色づかい、形すべてに気を配り、どこを縫ったか分からない見事な糸始末は、既製品など遠く及ばないほどです

「命を守り、自立を支えたい」という願いを込めて

自分たちの作った布おもちゃを使い、「ほんの少しずつでも新しいことができるようになってほしい」というのが、皆さんの想いだ。

心臓検診を怖がる子どもたちが楽しく練習できる「しんぞうけんしん」も、そんなひとつ。心電図の胸に貼る吸盤を「たこさん」、手足につけるクリップを「かにさん」に見立て、「たこちゅっちゅっ」と歌いながら練習する。こうして多くの子どもたちが落ち着いて検診できるようになったそうだ。

信号の色が分かるように作った布おもちゃは、赤信号で止まることを子供たちに教え命を守る。服の着方が身に付く「身支度エプロン」は、「カッコいいジーパンを自分で着れるようにしたい」というお母さんの願いから生まれた。これらには、「子どもたちの命を守り、自立を支援したい」という想いが込められている。

活動の原動力について河村さんは、「子どもたちが喜んで遊ぶ姿や笑顔に尽きます。見ているとすべて苦労が吹き飛びます。感動があり、そこからもらったエネルギーが、次のおもちゃを作る力になります」と話す。

子どもたちの笑顔を思い浮かべ、これからも一つひとつ丁寧に

海外の子どもたちも「さかなつり」に夢中(ベトナム)

TOY工房どんぐりでは、布おもちゃをもっと多くの人に知ってもらえるよう、展示会を開いたり、講習会に作品を提供したりしている。また、ベトナムやコソボなど海外にも寄贈している。

常に現場の声に耳を傾け、アイデアを出し合い、時には意見の違いを徹底して話し合い頑張ってきた皆さん。今後は、より重度の障害がある子どもでも楽しむことができるおもちゃや、成人の障害者が楽しめる娯楽ツールの提供も検討している。

今回のシチズン・オブ・ザ・イヤー受賞を、現場の先生や製作を手伝ってくれる福祉作業所の人たち、無償で材料をカットしてくれる業者の方、おもちゃの貸し出しをしているボランティアグループなど、活動を支えてくれた多くの方が喜んでくれたそうだ。

「そうした方にとって、TOY工房どんぐりの布おもちゃづくりに関わった時間が、充実した時間だと思ってもらえたらうれしい。これからも、子どもたちの笑顔を思い浮かべながら、ひとつずつ丁寧に作っていきます」と、メンバー全員が気持ちを新たにしている。

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