特別対談

これからも行動力と情熱で新しい時代を切り開いてほしい/シチズン・オブ・ザ・イヤー選考委員長 山根基世さん & 2011年度受賞者 税所篤快さん/シチズン・オブ・ザ・イヤー選考委員長の山根基世さんが、2011年度受賞者の税所篤快さんを迎え、バングラデシュでの教育支援への想いなどを伺いました。税所さんを活動に駆り立てた原動力に、山根委員長も納得され、笑みがこぼれました。
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  • 対談 後編
  • 対談を終えて

ひとりの人間の情熱が世界を変えられることに感動

山根
まずは、シチズン・オブ・ザ・イヤーの受賞をお聞きになったときの感想をお聞かせいただけますか。
現地で高校生の現状を変えられる可能性を直感したんです/税所 篤快(さいしょ あつよし)さん/1989(平成元)年生まれ。東京都足立区在。映像授業の可能性を信じ教育改革に挑み続ける
税所
ちょうど、就職のことやプロジェクトの今後について迷いがあった時期だったんですが、だんだん気持ちが晴れてきて、やるだけやってみようと前向きになった時、受賞のメールが来たんです。ホームページでこれまでの受賞者を見て光栄だと思いましたね。
山根
受賞された活動のきっかけは「グラミン銀行」との出会いですよね。
税所
そうですね。とても運命的でした。
山根
ちょうど失恋の後だとか。
税所
大学1年のころ、地元の足立区で教育プロジェクトをやろうと思っていたんですよ。塾に行けない貧しい子供たちのための学習塾のようなものを。それをいろんなところで言っていたのですが、結局やらなかったんです。彼女にふられるときそのことも言われて。有言不実行ってカッコ悪いんだと知りました。あれほどダサい自分はいなかったですね。
山根
そういう有言不実行の自分を変えようとしたわけなんですね。そして、「グラミン銀行を知っていますか」という本が人生を変えることになる。
税所
バングラデシュで、貧しい女性にお金を貸すというプロジェクトなのですが、ユヌス博士がたったひとりで、しかも20〜30ドルで始めたんです。それが国中に広まり、いろんな村で多くの女性が加入し、小さいけれどしっかりビジネスをしている。それを読んで、ひとりの人間がこんなふうに世界を変えられるんだなと、すごく感銘を受けました。
人の幸せを願い頑張る人を私たちもしっかり応援したい/山根 基世(やまね もとよ)さん/NHKアナウンサーとして「新日曜美術館」「映像の世紀」「ラジオ深夜便」など数多くの番組を担当。NHK初の女性アナウンス室長に就任。NHK退職後「ことばの杜」を設立
山根
その日のうちに、著者の秋田大学の坪井ひろみ先生に電話をして夜行バスに乗った。
税所
そうなんです(笑)。ユヌス博士を何年も取材している坪井先生なら、博士のことをもっと知ることができると思ったし、つながりもあるだろうと思いました。
山根
その行動力にはやっぱりみんなビックリしますよね。
税所
それくらいインパクトがあったんです。こんなに感銘を受けた本だったら、著者の先生に絶対会いたいって思いました。お話を伺ううちに、これはどうしても実際にいかなければと。
山根
それから1カ月後には、もうバングラデシュまで行ってしまう。グラミン銀行に行って、貧しい農村で女性たちがどういう風にしているかを実際に見たわけですね。
税所
強烈に覚えているのは、女性たちのまなざしの強さですね。彼女たちがやっているのは、小さいお店を開いて雑貨を売るとか、牛を飼って牛乳を売るといったささやかなビジネスなのですが、ユヌス博士が女性たちにお金を貸すのは、相手を信頼して尊厳を持たせる意味もあるのだと思いました。