CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

対談

自分が今いる場所で何ができるかを考える

  • 山根
  • KISEKIの活動は、託児所や幼稚園、こども食堂、妊産婦のケアセンター、職業訓練校など広がってきていますね。でも単に社会貢献をするだけではなく、持続可能なビジネスとして成立させるのはとても難しいことだと思いますが。
  • 山田
  • その点では、アフリカでボランティアや社会貢献を経験したい日本の若者のために始めた「ボランティア・インターンシッププログラム」が、初年度から100人以上の参加者を集めて、収入面で大きく支えてくれています。たとえ短い期間でも、現地を自分の目で見るのは貴重な体験だと思います。
  • 山根
  • 日本の若者も捨てたもんじゃありませんね。若者たちはここでどんなことを得て帰っていくのですか。
  • 山田
  • はじめはルワンダの人に何か教えてあげるといったスタンスで来るのですが、しばらくすると、「あれ?私のほうが教えてもらっている!自分は何もできなかったんだ」と気づくのです。その気づきや挫折が、自分がやりたいことの発見や自分の言葉で話せることにつながるのが、非常に価値のあることだと思っています。
  • 山根
  • そうした観点だと、私は多くの日本の子どもたちが、親や学校の先生以外、大人と触れあう機会が少なくなっていることも大きな問題だと思っています。
  • 山田
  • 本当に、日本はルワンダに比べて人とのつながりや助け合いが圧倒的に少なくなっていますね。実は、そういう地域社会本来の姿に戻れたら生きるのも楽なのになあと思います。ですから、インターンシップで来た若者にも「ここではなく、日本の自分がいる場所で、何ができるのか考えてほしい」と、いつも言っています。

実践を継続してきたことでスタッフも成長

  • 山根
  • 山田さんは、「シングルマザーの生活向上」「女性たちの雇用促進」「子どもの教育」、この3つの問題を解決するのが自分の生きがいだと言われます。そうした活動の中で、ご自身がいちばん生きがいを感じるのはどんなときでしょうか。
  • 山田
  • やはり、支援をしているお母さんたちや子どもたちが、目に見えて成長したときですね。例えば、うちに来たときは栄養失調で立てないし座れないし、話もできなかった子どもが、友だちと元気に遊んでいる姿を見たり、最初に来たときはとても攻撃的だったお母さんが、支援を続けるうちに心を開いてくれ、笑顔でハグしてくれるようになるといった精神面の変化は本当にうれしいです。
  • 山根
  • しっかり笑顔に表れるんですね。その喜びがあるから騙されたり裏切られたりした経験があっても、支援をやめようということにならないのでしょう。
  • 山田
  • 私自身、マネージャーやスタッフに、「私はやると言ったことは絶対にやり切る」と言っています。彼女らの多くは、これまでも支援すると言われて実際には何も変わらなかったことを数多く経験しているので、「私たちKISEKIは他と違う。やると言ったことは絶対やる」と自分たちで誇らしげに話しています。
  • 山根
  • それは大きな変化ですね。これまで継続して実践してきたことで、皆が山田さんのことを信頼してくれるようになったのだと思います。その信頼は決して裏切られないと感じます。

目の前の小さなことを積み重ね社会を変える

  • 山根
  • 日本とルワンダで布を分け合う「Dress for Two」も、楽しくて素晴らしいアイデアですね。
  • 山田
  • あれは、私が布が好きで大量に買って並べていたのを、時々お客さんが「欲しいけど長すぎるなあ」と言うのをスタッフが何度も聞いて、「それなら自分が半分ほしい」と言ったことから思いつきました。始めてから200着くらいは受注しています。一点物のオーダーメイドで価値があり、ビジネスとして着実に育ってきています。
  • 山根
  • 日本側で運営を行っている岡本さんとの息もぴったりで、いい仲間をお持ちですよね。これからルワンダでもっとこういうことをやりたいといった活動はあるのですか。
  • 山田
  • こちらが思わなくても、やってほしいという話がどんどんくるので、いつでも対応できるよう、経済的なことも社員の能力的なことも、私自身の経験や人とのつながりも、常に高めていきたいと思っています。
  • 山根
  • 依頼が来たら「待ってました!」ですね(笑)。私が山田さんの言葉でいちばん感動したのは、「とにかく、目の前の小さなことを積み重ねていく。それを諦めずに続けた人が社会を変えることができる」という、この言葉は胸に沁みました。これは実感ですか。
  • 山田
  • こういう活動をしていると、「もっとたくさんの人に届く活動にしたら」とか、「もっとネットワークを広げて寄付を集めれば」と言われますが、相手の顔が見えて、手が届いて、声が聞こえる人たちと一緒に課題に取り組んでいくのが大事なんです。できないことがあるとしたら、それは諦めたから。そこで諦めなかったら、絶対成し遂げられるんだということを、一人でも多くの人に伝えたいですね。
  • 山根
  • 本当にそうですね。これからも山田さんの積み重ねの成果に期待しています。
(左)色鮮やかで柄も美しいキテンゲは日本人にも人気(右)2022年には「Dress for Two」のファッションショーも開催
Page Top
Page Top