CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2020年度受賞

山本 宏昭さん

熱いハートで運んだ地元への感謝と人々の安心

熱いハートで運んだ
地元への感謝と人々の安心

地域に根差したバス会社

東京都東村山市にある「銀河鉄道株式会社」は、社員約40名、保有バス27台の地域に根差したバス会社。大手バス会社が撤退したり、長年市民が行政へ陳情してもバスが走らなかったりした地域で路線バスを運行する、市民の暮らしになくてはならない存在だ。現在は、小平国分寺線と東村山青葉恩多町線(環状線)の2路線が運行中である。

路線バスは公共性が高く、そもそも〝儲かる〟事業ではない。しかし、社長の山本宏昭さんは「税金には頼らない。路線バスがなくて目の前に困っている人、不便を感じている人がいるなら何とかしなければ」という信念で行政の補助金を受けず、観光バスの利益を補てんして路線バスを維持し、人々の生活を支えている。そうした想いが地元の皆さんにも伝わるのか、他社で路線バス運行の経験のある運転士は「今まで、乗り降りするお客さんから、こんなに『ありがとう』と言われたことがありません」と驚く。

また、銀河鉄道の路線バスは安全・安心はもちろん、運行時間の正確さでも知られ、車内に忘れ物があると、停留所の発着時刻に合わせ、連絡をくれた持ち主に直接お渡しすることもあるという。

自らもハンドルを握った山本さん。「目の前に困っている人がいる。今やらなければ」とすぐに決断

コロナ禍での車内トラブルに心を痛め、無料通勤バス運行を決意

東村山駅から東京駅まで約2時間、半年間にわたって通勤時安心を支え続けた

そんな銀河鉄道の山本さんは、新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた2020年3月から半年間、地元の人たちを都心まで送り届ける無料通勤バスを毎朝運行した。コロナ禍の通勤電車で、軽い咳払いやマスク着用の有無が原因のトラブルがニュースになることが増え、「それでも通勤しなければならない人がいる。少しでも感染の不安を減らしてあげたい」と思ったからだ。コロナ禍で観光バスのキャンセルが相次ぎ、経営的には非常に厳しい状況だったが、「今やらなければいつやる」との想いで決断したのである。

決断した後の行動は速かった。早速、2月の初め国土交通省に無料通勤バスの運行を掛け合うと、コロナ禍の特例として許認可が下り、1カ月後の3月12日からスタートできることになった。そして、「朝並んでも乗れない人がいてはいけいない」と事前予約制にして、乗る人数に合わせて最大9車両、180人を定員に大型観光バスを用意したのである。

利用希望者は先着順

利用者からの感謝の言葉や差し入れが大きな励みに

運行に際しては、「安心して乗っていただけるように」と車内の消毒・換気を徹底し、座席は2席分に1人が座るようして「密」を回避。乗車時には、利用者の皆さんにも消毒に協力してもらった。

こうして西武新宿線東村山駅から新宿西口を経由して東京駅新丸ビル前まで行く便(毎朝6時発)と、新宿西口まで行く便(6時半発)の2便体制で、地元の人々を無料で都心まで送り届けたのである。

運行が始まると、勤務先へ向かう多くの人から毎日予約が入り、地元の皆さんに役立っていることを実感。利用者からの温かい感謝の言葉や差し入れなども、山本さんをはじめ社員の大きな励みとなった。また、事務スタッフも自主的に5時半には駆けつけて利用者をお迎え、お見送りし、それも非常に喜ばれたそうだ。

この取り組みがテレビや新聞で紹介されると、信号待ちのときに隣の車から「テレビ見ました!頑張ってください?」と声をかけられたり、全国から激励や支援が寄せられるようになった。

新型コロナウイルスの感染対策には細心の注意を払い、車内の消毒・換気を徹底
利用者も乗車前の消毒に協力
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