
2010年10月29日、ダッカ大学の入学試験当日を迎えた。「貧しいものは、ダッカ大学には入れない」そんなバングラデシュの常識を打ち破るため、全員で目指してきた決戦の日である。
高校生たちと共に大学に着いた税所さんは、会場に向かう生徒一人ひとりに声をかけ送り出した。試験時間は90分。それぞれが持てる力を出し切り試験は終了した。
1週間後の11月4日、税所さんの携帯電話に運命のベルが鳴った。「ダッカ大学、一人合格!」
マヒンからの電話。税所さんは握りしめた拳を突き上げた。バングラデシュで「奇跡」とまでいわれた快挙の瞬間だった。
その後も生徒たちは頑張り、約30名の参加者中、20名近くが大学に合格し、そのうち4名が難関の国立大学に合格したのである。
あの夏の夜、星空の下で冷たい井戸水を浴びながら、かつての自分の記憶がよみがえり思いついた映像授業。それが、恩師や仲間の協力、そして生徒たちの必死の努力によって大きな実を実らせたのである。