特別対談

山根 基世さん & 白石 祥和さん

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「失敗したら戻っておいで」

画像:白石 祥和さん
山根
フリースクールだけではなく、就労支援も始められて、その一つが居酒屋というのもユニークですね。就労を目指す若者たちが調理や接客を通して社会に出るためのトレーニングをしていますが、就職が決まって巣立つときに、「失敗したら戻っておいで」という言葉をかけるとお聞きして、私はとても心を惹かれ感動しました。この想いはどこから生まれたのでしょう。
白石
自分は、大学まで順調にいっていたのが就職で失敗しました。それでも、米沢に家族がいて、戻れる場所があったから前に進むことができたのだと思います。それが、さまざまな若者とかかわるなかで、家庭のなかにすら居場所がない若者がいて、そんな彼らにとって「いつでもやり直せるよ」っていう場所が必要だと感じたのです。
画像:山根 基世さん
山根
本当に、いま自分に居場所がないという想いを抱えている若者がいかに多いか。日本では社会のありようそのものが、人間に窮屈な想いを強いているような気がします。白石さんが今取り組んでいるのは、やはりそこを変えようということなのでしょうね。
白石
社会を変えるのは難しいと思いますが、まず自分の地域で自分のできるところからこの活動を広げたいと思っています。米沢には知り合いも友達も多いので、私たちの想いを理解してもらえれば少しずつでも広がるでしょうし、そうすることが長く続けるためには必要だと思っています。
山根
若者の就労支援をする居酒屋も、皆さんに趣旨を理解していただいて、会員になる方もずいぶん増えているそうですね。
画像:居酒屋「結」は本音で話せる就職相談の場にもなる
白石
そうですね。でも、予約をいただくときに、「全員が会員にならなければいけないんですか」と聞かれることはよくあって、会員になりたくない人がいればお断りしているんです。長く続けていくためには、何よりも若者が安心してトレーニングできることが一番ですので。
山根
若者たちも、白石さんのことを「この人は、絶対に自分を守ってくれる」と心強く思っていることでしょう。白石さんのお話を伺っていると、高い目標を掲げるのではなく、目の前にいる困難を抱えた一人ひとりに向き合いながら、この子のために何ができるか考えて行動し、それを積み重ねてこられた気がします。きっとそれが活動の原動力なんでしょうね。
白石
ただ、フリースクールも居酒屋もそうですが、悩みを抱いている子どもたちや若者と毎日かかわるなかで、彼ら自身がどうしたいのかということだけじゃなく、もっと広い視野で変えていくことが、結局は彼らのために大事なんじゃないかという想いがあります。私も多くの失敗を経験してきましたし、今までかかわってきた若者のなかには、若くして亡くなった子もいて、このまま続けていっていいのかと思うこともありました。それでも、自分が生きている限りは、彼らの分も含めて精一杯やらなければいけないという想いがあります。

若者への支援が仕事にできる幸せ

画像:接客を通じて地域の人ともつながる
山根
学校に行けない、仕事に行けない、そんな子どもたちや若者に対する深い共感というのは、なぜ白石さんのなかにあるのでしょう。
白石
不登校や引きこもりという経験が自分になくて、逆に共感できない部分があるからうまくいっているのかもしれません。子どもたちに寄り添ってサポートするなかで、少し客観的にかかわることができたり、共感という部分で深く入り込み過ぎなかったりするからこそ、「大丈夫だよ。もう1回頑張れるよ」と励ますことができるし、一緒に前に進んでいけるような気がします。
山根
実は私も、地域全体で子どもを育てられる社会になったらいいなという想いを込めて、朗読を通して地域づくりと子どもたちの言葉を育てる活動を行っていて、それを全国に広げたいと思っているんです。でもこうした地道な活動というのは、モチベーションを保ち続けるのも大切だと感じます。
画像:若者の支援を仕事にできることが幸せだと話す白石さん
白石
そうですね。私の場合は、自分が大変だなと思うときも、目の前の若者のほうがもっと大変なので、頑張らなければという想いになります。この米沢で活動して約10年、いろいろ発信したり、挑戦させてもらっていますが、それを仕事としてできることが本当にありがたく、ものすごいモチベーションになっていて、もっと社会に返していかなければという気持ちがあります。
山根
そうなんですね。子どもたちは、自ら信じる道を突き進んでいる白石さんを見て、その生き方に学び目標にしたいと思うのではないでしょうか。そういう子どもがたくさん出てくるのが楽しみです。本日はありがとうございました。

(敬称略)

画像:対談風景
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