CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

対談

誠実な生き方から学びたい誰もが慕う素晴らしい人間力

シチズン・オブ・ザ・イヤー選考委員長の山根基世さんが、2013年度受賞者の上中別府チエさんを迎え、誰からも慕われる素晴らしい人柄の原点をお聞きしました。そこからは、これまで出会った方々やご家族への深い愛情、そして豊かな人間力が伝わってきました。

きびしい父親から学んだ誠実で真摯な生き方

  • 山根
  • チエさんは鹿児島の農家に、7人兄弟の四女としてお生まれになられました。そんななかで、特にお父さまの生き方にずいぶん影響を受けられたそうですね。
  • チエ
  • 父親は、起きる時間も寝る時間も規則正しく、仕事でも日々の生活でも何事にも真剣に取り組む人でした。今でも兄弟が集まると父親の話になるのですが、毎日、子どもたちの筆箱を持ってきて、草刈鎌で鉛筆をきれいに削ってくれたのをみんなが覚えています。また小学校の頃は、学校を休んで農家の手伝いをする子もたくさんいましたが、父親は一度も休めと言ったことがありませんでした。実は、父親は勉強が好きだったのに、兄弟も多く途中で学校をやめてしまったのだと、後になって父を知る人から聞きました。
  • 山根
  • そうですか。やはり、お父さまの心のなかには、学ぶことへの尊敬の思いがあったのでしょう。それでチエさんには休めと言わなかったのですね。お父さまから言われた言葉で覚えていらっしゃることはありますか。
  • チエ
  • 小学校2年生のときに叱られたことは、はっきり覚えています。何かの会に出品する絵を描くため、絵が得意だった私ともう一人の女の子が放課後残るよう先生から言われたのです。でも、私は気が強いその子がとても苦手だったので、残らずに逃げて帰ってきてしまったのです。それを兄弟から聞いた父親に、「先生の言うことを聞かないような子はうちの子じゃない」ときつく叱られました。そのとき以外怒られたことがないので、今も忘れられないです。
まず話を聞いてあげる
そこから人間関係も
信頼も生まれるんです
上中別府チエさんさん
  • 山根
  • 先生の言うことを守ることも大事ですが、お父さまはチエさんのことを大切に思っていたからこそ、誠実ではない態度をいさめたかったのではないでしょうか。でも、チエさんは小さい頃から家の仕事をずいぶん手伝われたとか。
  • チエ
  • 学校から帰ると、まず畑に行って小さい弟を家に連れて帰り、それから井戸の水を手が震えるくらい何度も汲んでお風呂を沸かし、牛に餌をあげて、ご飯を炊いて。今思うと、毎日、よくやりましたね。一度、つくった味噌汁がとてもしょっぱいときがあって、弟が「しょっぱい」と言ったら、父親は「しょっぱいときは、ちょっとだけ飲めばいいんだ」と一言だけ言ったことをよく覚えています。
  • 山根
  • お父さまは、人を責めたりしない人なんですね。
  • チエ
  • また、父親が「蕎麦がき」を作ってくれたときに、「固いから柔らかくして」って私が言ったら、「ああ、そうか」と言って、それからいつも柔らかく作ってくれました。今も兄弟が集まると、チエにだけ柔らかくして不公平だったと、笑い話になっています。
  • 山根
  • それは、チエさんが本当によくやってくれているという思いがおありになったのでしょう。それに、そうやって子どもの言葉をしっかり受け入れる態度って立派だと思います。そこで叱られたら、子どもは次から何も言えなくなってしまいますものね。お父さまのそういう態度は、チエさんのなかで人と接するときの基準になっているのかしれません。
勉強だけでなく働くことで
人間として
生きる力が学べます
山根基世さん
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