CITIZEN OF THE YEAR 社会に感動を与える人々を応援します。

受賞者一覧

2022年度受賞

きつおん親子カフェ

交流会の年代別グループ活動は、日ごろの悩みや疑問を話し合い、互いに想いを分かち合える場となっている

吃音への理解を深めるリーフレットも誕生!

きつおん親子カフェのメンバーは、交流会を重ねるごとに、吃音を話題にすることをタブーにせず、親子で話し合ったり、吃音に理解を深めたりできる機会を増やすことの大事さを実感していた。しかし実際には、学校で先生やクラスメートに自分から吃音であることを話し、理解してもらうことはなかなかできることではない。

そうした中、「吃音について分かりやすく伝え、吃音のある子どもと接するときの手助けになるものがあれば」という想いから生まれたのが、吃音啓発のリーフレットだった。きつおん親子カフェでは言語聴覚士監修のもと、まず「幼児期用」と「学齢期・思春期用」のリーフレットを作成。「幼児期用」では、吃音の基礎知識や親子で吃音の話ができるためのポイント、さらに周囲に理解を広げて子どもたちが安心して話せる環境づくりなどを紹介している。また「学齢期・思春期用」では、先生が吃音のある生徒と接するときのアドバイスや、クラスメートに説明する際の注意点などが、具体的な事例とともに紹介されている。

吃音の症状や支援方法などを当事者目線でまとめたリーフレット。左が「幼児期用」で右が「学齢期・思春期用」

発行部数は20万部を超え活動の輪は全国に

5千部からスタートしたリーフレットの無料配布は反響が大きく、全国の教育委員会や学校、病院の言語外来、保健センターなどから数多く問い合わせが来るようになり、寄付を募って増刷を実施。「各地のさまざまな場で配布してくれている人に“ありがとう”の気持ちを添えながら、『吃音のある子どもたちへの想いをのせて羽ばたいて行け!』と願いを込め、スタッフ皆で送り出しています」という戸田さん。

また、「幼児期用」「学齢期・思春期用」のリーフレットは、保護者が個人で申し込んでくる件数も多いという。そうした家庭に送った際には返事のメールや手紙が来ることもあり、「ある親御さんからは、小学校2年生の息子がリーフレットを見て、『これ僕のことだ』と話し、『お守りにする』と言って、とても大事そうにランドセルに入れているというメールをいただきました」と紹介する。

リーフレットをお守りにしなければならないというのは、本人にとってのつらい状況が想像できるが、「そうした中でも、私たちのリーフレットがその子の気持ちに寄り添うものになっていることは、この上なくうれしく思います」と戸田さんは話す。

こうして全国で活用されているリーフレットの発行部数は、2023年10月現在で20万部を突破。ホームページからダウンロードすることができる。さらに就活の時期の世代に向け、先輩たちの体験談が載ったサポートブックや、企業向けの啓発リーフレットも作成し配布が始まっている。

リーフレットは親や先生が吃音のある子どもと接するときの手助けになっている。また、就活の世代向けのサポートブックも配布が始まった

子どもたちに自分らしく成長できる環境を

(上)きつおん親子カフェのサイトからも吃音に関する多彩な情報が発信されている
(下)交流会終了後にはスタッフミーティングで次に向けた意見交換がなされる

活動開始から12年が過ぎ、社会が吃音への理解を深めることに地道に取り組んできたきつおん親子カフェの皆さん。コロナ禍で交流会が開催できなくなったときも、オンラインで世代別のグループ活動を実施するなど、参加者同士のつながりをしっかり継続してきた。

さらに2022年10月からは「月イチきつおんカフェ」がスタート。「申込み不要、参加費無料、出入り自由」というこの会は、吃音の子どもを持つ保護者だけなく、保健室の養護教諭や言語聴覚士などの支援者も集い、「お子さんの吃音に悩みながら、相談相手がなく一人で抱え込んでいる親や、そうしたさまざまな事例を自分の取り組みに活かしたいと参加する、意欲的な支援者の方々もいます」という。中には仕事の合間に立ち寄るスーツ姿のお父さんもいるなど、当事者にとって気軽に参加できる貴重な場になっている。

きつおん親子カフェの今後について、代表の戸田さんは「吃音についてひとりで悩みを抱え込んでしまうと、頑な考え方に陥ってしまうこともあります。子どもたちがありのままの自分を受け入れてくれる環境の中で、自分らしさを十分に発揮しながら成長していけるよう、これからも地道に活動を続けていきます」と思いを込める。

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