受賞者全員の活動を公開! 受賞者アーカイブ

尻別川の未来を考えるオビラメの会
絶滅の危機に瀕している尻別イトウの保護活動を20年にわたり継続
尻別川の未来を考える オビラメの会

尻別川の未来を考えるオビラメの会
北海道虻田郡ニセコ町

  • 2019年度受賞
  • 環境保護

受賞概要

河川改修工事などによる環境の変化で、生息場所を失ったイトウの保護に釣り人たちが立ち上がる

ボランティアグループ「尻別川の未来を考えるオビラメの会」(会長:吉岡俊彦(よしおか としひこ)さん)は、北海道虻田郡倶知安町(あぶたぐん くっちゃんちょう)を流れる尻別川で、20年以上にわたって絶滅の危機に瀕しているサケ科の淡水魚・尻別イトウ(=オビラメ)の保護活動を行っている。

尻別川のイトウはとりわけ巨体を誇り、アイヌ語に由来する「オビラメ」とも呼ばれ、多くの釣り人を魅了してきた。しかし、1980〜90年代に行われた尻別川の河川改修工事などによる環境の変化で、イトウは生息場所を失い急激に減少。この異変に誰よりも先に気づいたのが釣り人たちだった。「尻別川のイトウを復活させよう」と1996年4月、イトウ釣りの“大名人”と呼ばれた故・草島清作(くさじま せいさく)さんを中心に約10人で「尻別川の未来を考えるオビラメの会」が結成された。

道立水産ふ化場に勤務していた川村洋司(かわむら ひろし)さん(現事務局長)の協力を得て、尻別イトウが生息している場所を保護しようと50ヵ所以上を探したが、見つかったのは10pあまりのイトウが1尾のみだった。人工ふ化放流という方針に切り替えるも、イトウは親魚になるまで10年近くかかることから、長期での計画が必要と「オビラメ復活30年計画」を2000年に策定した。

2003年5月、初めて人工採卵・授精に成功した。同会では、人工ふ化させた稚魚のアブラビレを切除し標識にしたうえで、2004年から2018年までに計9回、計約7,800匹を尻別川支流に放流。2012年には、放流した稚魚が親魚となり自然繁殖をしていることを確認。さらに2019年5月にはその子(第2世代)が自然繁殖していることが確認された。イトウが人の手を離れて自然繁殖する「再導入」が確認されたのは国内で初めてのことである。

この「再導入実験」に並行して、約20年ぶりに再発見された天然産卵群保護のため、2011年に24時間体制の「見まもり隊」が発足した。遡上する繁殖期の尻別イトウを一般の釣り人から守るため、毎年4月中頃から1か月間、24時間体制で見守っている。

同会会員は現在80人。これまで尻別川支流で行ってきた繁殖活動を、いかに他の地域に広げて行くか、また、放流したイトウを守るための法的環境を整えることも課題になっている。治水のために設けた河川の段差に遡上を助ける魚道の設置や、稚魚が育ちやすい河畔林などの環境保全に向け、行政との協働を進めるうえで地域住民の理解が不可欠であり、同会では毎年5月、地元小学校で「出前授業」や「現地学習」を行ったり、地域住民を対象にした説明会などを開催したりすることで、活動の啓蒙に努めている。同会は、尻別イトウの復活だけに留まらず、イトウの保護を通してかつての尻別川の生き物の賑わいを取り戻すことを最終目標にしている。

婚姻色で真っ赤に変身した尻別川の雄イトウ。推定体長1.2m(撮影・足立聡氏)

人口採卵・受精させた卵のうち、ふ化するのはわずか約5%。大切に育てられる(撮影・鈴木芳房氏)

2004年以降、計9回、約7.800匹の稚魚を尻別川支流に放流(撮影・玉井秀樹氏)

遡上する尻別イトウを釣り人から保護するため、4月中旬から約1か月間、24時間体制で見守る

受賞理由

足元の環境に目を向け、イトウを復活させたいという純粋な思いが地道な活動の力になっている

20年以上にわたり、採卵、人工授精、稚魚の放流など、とても時間の掛かる作業をコツコツ続けてこられたオビラメの会の人たちの努力に頭が下がる。自然環境の悪化といえば地球的規模に視線が向いがちだが、足元の環境に目を向け、大切な生き物を守っていこうとする人たちがいることがうれしい。
ただ一つ、大好きなイトウを復活させたいという素朴で純粋な思いがこの活動を支えている。会の人たちの意志の強さに感動する。

受賞コメント

「今は昔の巨大イトウを復活させたい」一釣り人の問題提起に、多くの釣り人や研究者などで結成され、「オビラメ復活30年計画」を掲げて早20年。唯一の天然産卵支流の保護と稚魚放流に基づく新たな自然再生産支流の作成に成功し、今後尻別川全域への拡大に自信を深めています。今回の受賞には、イトウ保護というローカルな話題に全国レベルで市民目線から評価をいただき深く感謝すると同時に、多くの方にも現地で深紅に染まった巨大イトウをご覧になり、感動を共有していただけると嬉しいです。ありがとうございました。

ページの先頭に戻る