有識者エンゲージメント

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「シチズングループCSR報告書2017ダイジェスト版」の発行にあたり、ロイドレジスタージャパン株式会社 取締役の冨田様をシチズン時計本社にお迎えして、ディスカッションセッションを実施しました。2016年度のCSR活動を踏まえ、今年度以降におけるグループ全体でのCSR活動の方向性や、どのように取り組みを強化していく必要があるか、また情報開示の充実化などについて、課題を確認しました。

(実施日:2017年5月9日)

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重要課題の再整理の意義について

鈴木:
昨年度、「シチズングループCSR報告書2016」に冨田様からお寄せ頂いた第三者意見を踏まえながら、シチズンではCSR活動を実施してきました。中でも、取り組みの事例や成果の説明にとどまらない情報開示が必要というご意見については、これまでのシチズングループとしての活動全般を通じてストーリー性を強くは意識しておらず、断片的な物語の体裁となってしまっていたと認識しています。そして、ご指摘のような情報開示を行うためには、明確な課題認識が必要との考えから、2016年度は重要課題の再整理を行い、6つのマテリアリティを選定しました。
北野:
今回のマテリアリティ選定の過程では、様々なステークホルダーの方を招いてご意見を頂戴するというところまでは出来ていませんので、今後の課題になってくると思います。2016年度は、グローバルコンパクトやEICC、SDGsなど、国際的なイニシアチブを参考に、シチズンにとって重要な課題を再確認しました。今後、マテリアリティとして定められた課題の解決に向かって、グループ全体で取り組んでいくために、社内の認知度を高めているところです。そして今回の報告書では、選定した6つのマテリアリティをSDGsのゴールに紐付けながら、マテリアリティに基づいた取り組み内容を開示しています。
田中:
予定としては、今後、2年間程度で、「SDGコンパス」で推奨しているような、ステークホルダーの方々を巻き込みご意見等を頂きながら、マテリアリティのレビューを行うといった、サイクルを形成していきたいと思います。
冨田:
貴社では、昨年CSVという単語を使用していましたが、今年はSDGsを基軸に取り組みも再整理されているようです。国際社会で認知されている原則、ガイドラインなどに対して様々な捉え方や接し方がありますが、SDGsに関しては、今、日本の企業も積極的に関わろうとされています。貴社の活動がSDGsの何番のゴールと関係しているかを示すことも必要ですが、SDGsの本質は、世界が持続可能な発展の危機にあり、地球市民が存続できなくなるという問題意識の中、2030年までに達成しなければならないゴールに対し、自社がどのようにプラスの貢献ができるか、ピンポイントでチャレンジする際のヒントにするという発想が重要だと思います
鈴木:
また昨年度は冨田様より国際的なイニシアチブへの対応の重要性についてもご意見を頂きました。海外企業の買収や、外国籍社員の採用増加など、シチズンのグローバル展開を強化していこうとしています。そんな中、2017年度からは従来から参加してきたグローバルコンパクトネットワークジャパンへの社員出向もあり、よりコミットメントしていく必要性を感じています。このたびの、マテリアリティとSDGsの紐づけもその一環だと考えています。
田中:
シチズングループでは、「シチズングループ行動憲章」の実践をCSR活動の基盤としています。マテリアリティとSDGsを紐づけてはいますが、基本的にはすべてが行動憲章と結びついています。昨年10月に改定した行動憲章とSDGsとの関係性を明確にしながら、社会課題の解決に向けて、シチズングループとしてできる限りの努力をしていきたいと思います。

最近の国際社会の動向や企業のCSR活動、SDGsへの取り組み状況について

冨田:
近年の傾向としては、端的に言って、CSR活動がメインストリーム化しているという点が一番の動きとして挙げられます。一つには、CSRというものの国際的なレベルでの認知度が上がってきていて、国際的な行動規範化やルール化が行われてきています。その例がSDGsや、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」で、企業がきちんとしたCSRを実践していくことが、メインアジェンダになってきていると言えます。
これまでは、どちらかと言えば、国別に法律を作ってきていましたが、今は国ごとの管理体系がある意味では成り立たなくなっているため、世界の共通課題として企業のCSRのあり方を位置づけていこうという動きが、如実に出てきています。TPPの議論も関税の話だけではなく、実は貿易に関わる環境や労働の基準も含まれています。単に関税が安ければ良いわけではなく、環境や労働基準も含め国際的なレベルで固めて行こう、共通言語にしよう、という動きがあります。
これを企業側の視点で見ますと、今までイメージ的には、「ビジネス」と「CSR」は何か少し切り離されたもの、別もの、という印象が否めなかったと思いますが、企業側でもメインストリーム化が起こってきています。事業の中で、どのような社会的な課題、環境課題があるのかを、捉えるようになってきています。
ですので、それぞれの企業が何をビジネスとしていて、どのような課題があるのか、より掘り下げていかないと、適切に対応できない時代が来ています。貴社グループにおいても、時計、工作機械、デバイスと、それぞれ事業ごとに課題が違っていて、事業ごとに、どのような課題があるのか、どのようなリスクや機会があるのかを、きちんと紐解いて対応していかなければならない時代になってきています。同時に、この状況にどう対応しているかなどをいかに開示していくかも、考える必要があります。これも先ほど申し上げた通り、規範化が進んでいますので、国やグローバル企業が独りよがりではいけません。IIRCやGRIスタンダード、EUでの非財務情報の開示の法制化への動き、各地の証券取引所によるESG情報開示の義務化推進への対応等、一定水準に見合う開示が求められてきています。
日本においても、非財務情報は、投資の観点からもますます注目されてきていますので、この点において企業への期待が高くなってきています。貴社におかれてもCSR部門が企業の中のメインストリームの一つとして、事業部門や経営層と積極的に関わりながらポジショニングをとっていくことも、今後求められる変化なのではないかと思います。
一方、グローバルなリーディング企業は、自分たちの基本的な考え方ができているだけなく、投資家のESG評価について考え、それに対応すべき情報開示も行っています。このようにレポートを通じて如何にきちんと世の中が求めている水準の開示をしているかということは、大変重要です。そういう意味では、ダイジェスト版(冊子)とウェブ版を分けている御社の方向性は良いと思います。情報開示のあり方も整理しながら、CSR活動推進の体制を強化していくことが、今後一層重要だと思います。

創業100周年迎えるシチズングループへの期待

冨田:
現在のようなCSR報告が始まって十数年が経ちます。当初は情報開示に意欲的な会社はあまりありませんでしたが、積極的に情報開示を行う重要性への理解は深まってきています。まだまだ事実としての課題をさらけ出してしまう企業は多くはありませんが、最近は、ネガティブな情報の開示にも前向きな会社が増えています。
鈴木:
昨年の冨田様のご指摘にも、KPIなど目標の明確化と数値情報の開示の充実、というものがありました。情報の中身のみならず、情報の見せ方にも工夫が必要と思っています。
北野:
CSR活動の重要性について認識を高めるよう、働きかけが重要だと考えています。
冨田:
そうですね。この点については、外の世界と触れていくことも必要です。年に一回、報告書の発行時期だけ自社のCSR活動について考えるというのでは、実感が湧きづらいとは思います。ここを変えるには、対話の場を設けるのが良いのではないかと考えます。社内のワークショップやセミナーなどの場で外部有識者や講師を招いたり、世の中で今何が期待されているのかなど、生の声に触れる機会なども、必要だとは思います。しかし、やはりその企業にとっての、一番良い方法を模索し実践することが大切です。元々の企業文化や体質の中に、ジワジワと染み入り根付かせることができる「シチズングループにあったやり方」を見つけて、継続的に実践して頂きたいと思います。
鈴木:
シチズングループも、云わば『樹齢100年の樹』です。この100年樹を次の100年間も保ち続けていくとすれば、当然変わらないものと変わる必要があるものがありますから、地に足を着けた活動をしっかりと進めたいと思います。
冨田:
具体的な取組みとしては、「CITIZEN L」の取り組みは素晴らしいですが、環境の側面もDRCのコンフリクト・フリー対応以外は、責任ある調達の労働環境について開示がありません。さらに、こうした取り組みをしている製品が、「CITIZEN L」だけに見えますので、他のモデルにおいても、横展開を検討して頂きたいです。貴社の場合、投資家や専門的な分野でアピールしていくだけでなく、ブランドにエシカルやサスティナビリティを融合し、製品の差別化やブランド価値の向上に結びつけて頂きたいと思います。そして今回のような、前年度の意見に対するレビューや振り返りを基にしたセッションは、非常に素晴らしいことです。貴社とステークホルダーの双方にとって意味のある対話をすることは、必ず次の活動に活かされると思いますので、是非、続けて頂きたいと思います。
鈴木:
2016年度は色々な取り組みを進めましたが、2017年度は、ある意味シチズンらしくないことも少しやってみようかと思っているところもあります。冨田様にもご助言頂いた通り、シチズンらしいところを残しつつ、グローバルな基準にも近づけていくのは、『樹齢100年の樹』であることも含め、簡単ではないですが、対応していかなければならないと思っています。
冨田:
その点では、例えば3年後に、どのあたりまで到達したいかというロードマップを持つのが良いのではないでしょうか。一まず3年後くらいにどこまで到達したいのか、そしてその先は何をやっていくのかについて、考えた方が良いかもしれません。
鈴木:
2017年度には、改定した行動憲章の更なる浸透・徹底、グループ全体で行っていきます。これまでは、グローバルでの展開を本格的に行うことは、文化や商習慣の違いなどから、かなり難しいと考えていました。ただ、「真のグローバル企業を目指していくのにそれをやらずにどうする」という社長の言葉もあり、9か国語に翻訳をしました。もちろん、作るだけにとどまらず、浸透活動にもしっかり力を入れていきます。
また2017年4月から、グローバルコンパクトネットワークジャパンに社員が出向していますが、このような国際機関との協働は初めての取組みです。 その他、責任ある調達のグループ内での展開など、多くの活動を予定しています。100周年を迎える来年度に「グローバルプラン2018」の最終年を迎えることもありますので、その先を見据えながら、しっかりと取り組んでいきたいと思います。

以上

冨田秀実写真

冨田秀実
ロイドレジスタージャパン株式会社
取締役 事業開発部門長
政府の委員会、国際的な規格等への参画多数

CSR担当写真

シチズン時計株式会社
CSR担当
写真左より、田中、鈴木、北野